2024/05/11 11:47

The way to go.


attranteが始まって1年半。発起人であるeiichiは、今年の3月に慶應義塾大学を卒業し、9月からロンドンに渡る。一見順調に見えたキャリアパスだったが、日本で既定路線であると言われる就職活動には参加せず、海外進学という道を選択した。有利である、安定していると言われる道を離れて、なぜ自分の道を進むことにしたのか。学生生活の中で感じたこと、考えたこと、そして内側にあった苦悩に迫る。




初めまして。Eiichiと言います。
Attranteをメンバーと一緒に立ち上げて、今は主にデザインのディレクションを担当しています。
 

・“普通”だった大学生活と、味わった苦悩


そうですね。慶應に入ったことで周りはすごいねみたいな感じで言ってくれましたし、
授業に出席して、バイトして、サークル行ってみたいな、入ってからは本当に普通の大学生活だったと思います。
 
ただ高校大学と過ごす中で、自分自身グループの中で中心になるようなタイプではないなと感じました。何となく場の空気を壊してしまう雰囲気だったり、仕事がうまく回っていない時に代わりの案を考えたら、上の人から失礼だと言われて一蹴されてしまったり。就職活動もそうですけど、人間関係を中心にして回っていく環境だと、正直自分の性格を活かせないかもしれないなと思うようになりました。まあなので、別の道に行こうと。それがアトランテを始めたきっかけでもありますし、今自分が取り組んでいることにも繋がっていますね。


 

・クリエイションに魅せられて


僕は小さい時から絵を描いたり、アイディアを考えたりすることが好きで、すごく夢中になれている感覚がありました。なので、仕事をするならクリエイティブな仕事が良いなと、何となく高校生くらいの頃から思っていました。元々家族には、大学に入学した時に、卒業後はスキルを伸ばすために海外に行きたいみたいな話をしていて、その準備を本格的に始めたのが大学3年の時です。

海外に行きたいと思った理由は、世界を股にかけて仕事をしたいという気持ちがあったのと、自分のグラフィックデザイン(主に広告など、平面上で作るデザインのこと)のテイストが、海外の方が合っているのではないかと思ったからです。僕は写真や絵の雰囲気を大事にしていて、ブランドの世界観を大事にするようなデザインをします。ただ一方で、日本の多くの広告は、今のセールは3割引き!みたいな、情報を伝えるためのデザインになる。もちろんそれも大事なんですけど、僕がデザインのスキルを伸ばすなら、海外の方が過ごしやすいのではないかなと思ったんです。当時はスターバックスやナイキなど、世界観で勝負する企業が台頭していた時期だったので尚更でしたね。進学でネックになるのは資金面だと思いますが、早めに伝えていたことで家族も準備をしてくれていました。その点はすごく感謝しています。デザイン系の大学をリサーチして、アメリカやオランダなど、色々な国を見ました。日本も含めてですけど、国ごとに特徴があって面白いなと思いましたね。
 


・イギリス行きを決めた理由


イギリスの芸術大学にしたいと思った理由は、これも海外に行きたいと思った理由と同じなんですけど、世界をリードするデザインの大学院があったことと、イギリスのデザインに対する価値観が、自分に合っているのではないかと思ったからです。日本だとデザイン職は、商品のパッケージといった表面的なデザインを作るイメージがあると思いますが、イギリスでは表面的なデザインだけでなく、サービスの仕組みやブランドの理念といった、社会的なアイディアを出すこともデザイナーの仕事に含まれます。デザイナーとブランド側が対等に話が出来るとも聞いていますし、僕はアカデミックなバックグラウンドなので、その方が自分に合うのではないかなと思ったのでイギリスを選んだ感じです。ロンドンも実際に1ヶ月ほど滞在したことがあるのですが、デザインや文化に対する意識も高いですし、非常に過ごしやすい街だなと感じました。実際に行くのがとても楽しみですね。




・環境を選ぶということ


選ぶ環境の話をすると、人によっては甘えだと捉えられることもありますけど、自分のタイプを活かすには、環境を選ぶことは非常に大切なことだなと思います。それぞれ自分の良さがあると思うんですけど、それを活かせるかどうかは、周りの環境次第なのかなと思う場面が度々あります。


これは学生生活で感じたことですけど、好まれるタイプとそうでないタイプというのが、正直どの場面でも必ず存在してきます。どんなリソースにも限界はあるので、何かをするには優先順位をつけないといけない。そうなると必ず、優先されるタイプとそうでないタイプというのが出てきます。これは1人の人をとってもそうだし、組織や国としてのカルチャーもそう。ヒエラルキーと言ったら言い過ぎかもしれないですけど、たとえば分かりやすいところで言うと、今の世間で好まれやすい顔のタイプって決まっていますよね。僕が小さな頃、アイドルやドラマの主人公の人たちを見ていて思ったのは、みんな同じような顔をしているなということでした。目が二重で、口はシュッとしていて、横顔のタイプも決まっていてみたいな。それは今のインスタグラムや、周りの人の話を聞いていても思うことだし、自分もそういう人を見ると綺麗な顔だなと思ったりします。


ただインスタグラムや、一部の人間関係では生まれ持ってそういう顔のタイプを持っている人が優先されるのかもしれないですけど、世間を見渡せば、他のタイプを持っている人の方が優先されることってたくさんありますよね。例えばシステムエンジニアの業界で働こうと思ったら、コードを書けるかどうかが重要で優先事項になると思うんです。黙々とパソコンに向き合える力も大事かもしれない。システムに興味がある人の方が有利になって、そこで顔のタイプがどうとかいう話はどうでも良くなると思うんですよ。当たり前の話ですけど笑 ただ世間では大企業に行く方が有利だからとか、理想を持ちすぎるのは良くないからとか言って、少ない形に当てはめようとしてしまう。


正直生まれ持った容姿のタイプや、親から引き継いだ性格を根本から変えるのは無理があると思うんです。費用も労力もかかりますし。だったら、それを認めてくれる場所や、優先してくれる場所に行った方が良い。その場所へ行くために、時間をかけるのを恐れずに準備をした方が良い。本当に好みって人それぞれで、周りがそれはちょっとと言うことでも、好きになる人っているんですよ。日本人の女性は白くなりたいと思うのが主流でも、スペインでは多くの女性が肌を焼きたいと思ってビーチに集まります。それも好みの違いの一例ですよね。


実際に僕が志望校を決めようとしていたときも、一部の方には非常にチャレンジングだと言われました。ただ一方で、海外で仕事をされていたデザイナーの方々の中には、君には可能性があるからやってみようと言ってくださる方々もいました。そこで僕は家族とも相談をして、どなたと一緒に準備をするか考えました。結果的に僕は後者の方々へコーチングをお願いして、行きたいところに行くことができた。自分の良さを引き出すようなコーチングをしてくださったデザイナーの方々には、感謝してもし切れないなと思いますね。僕自身も誰かに勉強を教えたり、何かを頼む場面があるのですが、それぞれの特徴だったり良いところを見極めて、上手く活かしていけるような人になりたいですね。



: Eiichi

2022年11月に、友人であるメンバーと共にAttranteを立ち上げる。慶應義塾大学文学部卒。


2024年9月より、ロンドン芸術大学 大学院(MA)Graphic Branding and Identityに進学予定。


vol.2につづく(6月中旬ごろに公開予定です。)


文章(S.O)